線の上を歩く
モンテッソーリのクラスでは、たいてい教室の中に線が引いてあります。この線は、読み聞かせや手遊びの時に座るためのものではなく、「線上歩行」というモンテッソーリのカリキュラムの一つとして引いてある線です。子どもは毎日、音楽や歌に合わせ線から落ちないように、綱渡りのように線の上を歩く練習をします。年齢の低い子は、なんとなく線に沿って歩きますが、4~5歳になると線から落ちないようにバランスをとり、前の足の踵と後ろの足のつま先をくっつけるように、上手に歩きます。6歳以上になると、手に物を持ちながら、さながら能の舞のように静かに歩きます。
どうして幼稚園でこんなことをするのか、と思われるかもしれません。実は子どもの成長をよく見ていると、上手に線から落ちないように歩き始めるころと、鉛筆で紙の上の線をなぞり始めるころがほぼ一致しています。また、数の仕事をさせても、位取りを理解したり、足し算や掛け算、数の並びの中にパターンを見つけられたりするのと、線上歩行を極める時期がほぼ一致しています。加えて、土踏まず、足首、ふくらはぎがうまく発達していない、内耳の平衡感覚が育っていない、という障害も早めに発見できます。
人間の脳の中では、身体全体の動きが、目や手指をコントロールする部分に密接に繋がっているようです。暖かくなって外で体を動かす機会が増えてくるころですが、外遊びでも線や平均台の上を歩いたりする遊びに子どもを誘ってみてあげてください。
<アブラモフ 羊子>
京都生まれの京都育ち、同志社大学卒業。Concordia University 幼児教育学修士。2000年Golden Apple Award Finalist。2001年Kohl/McCormick Early Childhood Teaching Award受賞。現在モンテッソーリ・ランゲージ・アカデミーでDirectorを務める。バイリンガル教育のプロフェショナル。