ママみててね Vol.112

人種差別

毎年1月になると学校でマーティン・ルサー・キングの話をします。「肌の色が違うというだけで、一緒の学校に来れなかったり、遊べなかったりした」という話です。幼児にとっては把握しがたい話ですが、アメリカで育っていく子供たちにとっては避けて通れない話題です。もともと幼児の特性として、身の回りにある物の外見の違いを判断して、それを区別したり、より分けたりするのは、知能の発達からすると健康的なことです。それをあえて「みんな同じ」と教えるのですから、ちょっとしたテクニックが必要です。

そこで、私がよく使うデモンストレーションを紹介しましょう。茶色い卵と白い卵を混ぜてボールに持ってきて、子供たちにより分けをさせます。茶色と白により分けた後、それぞれのグループの卵をボールに割ります。中身はどちらのグループもそう変わりがないことを確認して、今度は両方のグループを一緒にします。これで、どれが茶色でどれが白かもう分けられません。

子供たちに、割る前の茶色い卵を白だと教えることはできません。卵はそれぞれ違っていてきれいなのですから。ただ、外見は違っていても中身はそう変わりがないこと、またいろいろ違っているからこそきれいなのであって、わざわざ自分や他の人を変える必要がないことを理解してもらえればいいと思います。

人は、生まれ持って人種差別の概念を持っていません。この概念は周りの大人や社会が子供たちに植え付けていくものです。幼児は、私たちの社会観をスポンジのように吸収して大きくなっていっていきます。私たち大人同士の会話にも気を付けていきたいですね。

<アブラモフ 羊子>
京都生まれの京都育ち、同志社大学卒業。Concordia University 幼児教育学修士。2000年Golden Apple Award Finalist。2001年Kohl/McCormick Early Childhood Teaching Award受賞。現在モンテッソーリ・ランゲージ・アカデミーでDirectorを務める。バイリンガル教育のプロフェショナル。