柳家さん喬師匠に加え、TVでもお馴染み、林家正蔵師匠を迎えての「二人会」。
今年で8回目を迎える「シカゴ寄席」。今回は柳家さん喬師匠に加え、タレントとしても有名な林家正蔵師匠を招いて開催された。
さん喬師匠、正蔵師匠の順で交互に披露された今年の演目は、第1部が「天狗裁き」「お菊の皿」、仲入りを挟んだ第2部は「井戸の茶碗」「ねずみ」の4席。第1部ではアメリカにいることを忘れるかのような爆笑が会場中から起こりながらも、第2部では一転、観客は各師匠の落語に聞き入り、人情味溢れる展開に酔いしれた。
落語好きから初心者まで、アメリカにいながら楽しめるこの貴重な「シカゴ寄席」を、ぜひ多くの人に体験していただきたい。特にアメリカ生活に慣れきってしまった人、落語に縁がないと思っている人には、日本の伝統芸能の素晴らしさを再確認すること間違いなし。落語の魅力に一度触れてみてはいかがだろうか。今年も来場者をうならせる公演を終えたお二人に話を伺った。
―今回の公演はどのような経緯で二人会になったのですか?
さん喬師匠:正蔵師匠はね、いつも「なんかやりたいですねー」とおっしゃっていたんですよ。「実は毎年こういうことやってるんだけど行ってみる?」と聞いたら(さん喬師匠は2006年から毎年VT州のミドルベリー大学の夏期日本語学校で落語を通じて日本語を紹介する活動を行っている)、ぜひ行きたいと引き受けてくださりました。
―今回の演目はいつ、どのように決めましたか?
さん喬師匠:それは上がる直前ですね。僕たちの世界は、トリの声を優先するんです。トリの師匠がどういう話をやるか聞いて、今日はそれじゃあこれとこれをやろう、僕はまず邪魔にならないように、一番最初はお客さんに無理やり笑わせるような話じゃなくて、のんびり、ふふ、ふふって笑って場づくりをするのが僕の今回の役目、そういうような話を選びました。
正蔵師匠:基本的にわかりやすい噺を選びました。「お菊の皿」をやったのは落語は季節が大切なので、「ねずみ」はたぶん、アメリカに長くいらっしゃる方や生まれ育った方でも、オチがわかるんじゃないかなと思ったからです。
―日本でやるときと反応は違いましたか?
正蔵師匠:日本でやってるんじゃないかってわかんなくなっちゃって、日本のどこかの都市でやってるんじゃないかって。しかもすごく落語を聞こうっていうお客さまのエネルギーがあるんですよ、なんかこうすごく聞いてくださる。だから楽屋に戻ってきてさん喬師匠に、「不思議な体験をしました。まるで日本でやってるみたいな気がしました、日本のいいお客さまの前で。」とお話しました。すごく離れてるのにね。
さん喬師匠:お客さまは日本でやってるのと同じように笑ってくださるし、だいたい理解してくださるし。ただ話す時に、ひょっとしたら長い間アメリカにいる方はこういう言葉にスッと素直にパッと反応できるかなっとか、そういう疑念は持つけどね。受けなかった、あ、東京ではここで笑うけど、ここでは笑わなかった。そうか、やっぱり住まう環境が違うんだなってね、そういうことは正直言ってありますよね。
―正蔵師匠は、今回シカゴは初めてとのことですが。
正蔵師匠:シカゴピザはおいしいねー。太るね(笑)。シカゴの食べ物はとてもおいしいですね。ジャズを聴きにいく予定だったんですが、眠くなっちゃって行けなかったんです(笑)。 あ!ドキドキしましたよ、ブルースブラザーズが好きだから。今度来た時はもうちょっとゆっくりしたいです。明日帰ります(泣)。
さん喬師匠:ま、楽しみはまたまた、ということで。
はじめてのシカゴにまだまだ心残りがある様子の正蔵師匠。来年もさん喬師匠とのシカゴ公演を期待したい。