「シカゴ寄席」さん喬師匠・正蔵師匠 二人会レポート&インタビュー

Mスクエア主催によるシカゴの夏の恒例行事となった柳家さん喬師匠、林家正蔵師匠による「シカゴ寄席」二人会。7月17日にハーパーカレッジにて開催された模様とインタビューをレポート。

今年で9回目を迎える「シカゴ寄席」。今回も昨年同様柳家さん喬師匠に加え、林家正蔵師匠を招いて開催された。来場者には「助六弁当」が振る舞われ、今年は着物や浴衣姿の来場者が多く、会場に一層華やかさを添えていた。

第1部はさん喬師匠、正蔵師匠の順で「ちりとてちん」「読書の時間」、仲入りを挟んだ第2部は正蔵師匠、さん喬師匠の順で「松山鏡」「唐茄子屋政談」の計4席。第1部では会場中が何度も笑いに包まれ、特に正蔵師匠による新作の現代落語「読書の時間」では、会社員の家族をテーマにした少し危うい内容で、観客を喜ばせた。第2部では一転、さん喬師匠による「唐茄子屋政談」の人情味溢れる展開に、涙をそそられる場面もあった。公演を終えたお二人に話を伺った。

ーさん喬師匠、紫綬褒章受章おめでとうございます。
さん喬師匠:「褒」める「賞」ですから、褒めてくださったんだなと。「これからお前はもっと頑張らないといけないよ」ということだなと思います。

ー今回の演目はどのように決めましたか?
正蔵師匠:前回は私がトリでしたが今回はさん喬師匠がトリですので、流れをどうするかお伺いして決めました。最初は笑っていただく話を中心に、仲入り後は古典落語をしっかりと聞いていただくという2部構成にしました。

さん喬師匠:僕たちはネタを決めるのは行き当たりばったりなんです。正蔵師匠がうけていると思ったらこっちは抑えようかなと。際限なく笑わせることはしないです。笑うとお客さんが結構疲れますから、少し笑いを抑えてあげたりします。正蔵師匠にネタを聞いた後に散々悩んで決めました。

ーお客さまの反応はいかがでしたか?
正蔵師匠:今年はご新規の方、特に若い方や着物・浴衣の方が多く、晴れの日と思ってくださるのが嬉しいです。

ー小さなお子さまもいましたが。
正蔵師匠:落語は大人のものなので、その世界を子供たちがちょっと覗いてみて、言葉がわからなくても大人が笑っていた落語ってこういうものなんだな、という経験にもなります。

ー際どいお話もありましたが。
さん喬師匠:正蔵師匠はわざと選んでいるんです。意地悪なんです(笑)。でも落語の面白さというのはそういうものなんだということを子供さんがわかってくれたら。退屈せず真剣に聞いてくれて感動してしまいました。

ー正蔵師匠、現代落語をされましたが、現代の言葉についてどう思いますか?
正蔵師匠:言葉は時代でどんどん変わるものだと思うので、江戸落語の場合はその言葉の意味が少しわからなくても言葉に江戸の香りがあるので、それを守っていかなければいけないと思います。

ー言葉には流行がありますが、落語の世界にも流行はありますか?
正蔵師匠:噺(はなし)家は世の中のいろいろなことを見て聞いて、それを体に入れて、感覚として古典落語に入れたり、新作なら枕でギャグとして入れたりします。言葉は生き物ですから、落語家自身も今の世の中に生きて、いろいろなものを見て感動して、人間を磨くことに敏感でなければいけないと思います。

音楽好きで知られる正蔵師匠。今年もあいにくシカゴジャズを聴く夢は叶わなかったが、さん喬師匠と共にシカゴ名物のステーキを召し上がり、ミュージカルも堪能された。3度目の正直できっと来年こそはその願いも叶うことだろう。さん喬師匠が初めてシカゴにいらしてから丸9年。来年10回目を迎えるシカゴ寄席に今から胸が膨らむ。

<柳家 さん喬(やなぎや さんきょう)>
東京都墨田区出身。1967年5代目柳家小さんに入門。1972年二つ目昇進、「さん喬」と改名。1981年真打昇進。寄席の年間出演回数が最多の落語家の一人。落語協会常任理事。2017年紫綬褒章受章。

<林家 正蔵(はやしや しょうぞう)>
東京都台東区出身。1978年父、林家三平に入門。前座名「こぶ平」。1981年二つ目昇進。1987年真打昇進。2005年、9代目「林家正蔵」を襲名。マルチタレントとしても活躍。落語協会副会長。