【第270回】南太平洋に浮かぶ国々

ひと時を無心で過ごしたい人へ 

南太平洋の島々は昨今大陸からのバカンスに訪れる人たちのメッカとなっている。ゴーギャンやスチーブンソンの訪れた頃には自然環境豊かな極楽浄土だった常夏の島々。適度に文明の波にさらされ利便性もほどほどの昨今は、熟年生活やバカンスを過ごすには最適な環境ではなかろうか。数年前南太平洋の島々を巡ったが、その一部を紹介しよう。

ミクロネシア
トラック諸島のチュークを訪れた。海辺は綺麗なサンゴ礁だ。暮らしは質素、生活物資は殆どアメリカ製品だ。日本製品や日本レストランもあった。かつては日本の統治国、今はアメリカの委任統治国。国の経済は殆どアメリカの援助で成り立っており、貧しい割には日本製の中古車が多くステイタスのようだ。「こんにちは」が通じる日本贔屓の島だ。

パプア・ニューギニ
ここではラバウルを訪れた。子供の頃戦時歌謡曲だった「ラバウル小唄」を思い出した。1994年2つの山が同時に噴火して町は灰に埋もれ空港や工場地帯を含めて廃墟と化した。町は25km離れたところに移転、筆者の目的の温泉は火山で噴出場所が変わっという。船で寄港したので港からタクシーで行った。岩沿いから沸いた温泉が砂浜を流れて海に注ぐ。多くの温泉は海の中で沸く。波うちぎわの浅瀬で浮いていれば粋な気分を味わえる。世界各地の露天風呂を経験した筆者だが、太陽燦々の南国での海中温泉は初めての体験だった。物価は安価、だが品数が乏しい。人々はフレンドリー、リゾート食事は観光客値段で高価だった。旧日本軍の船など残骸が散乱しており、風雨にさらされたとはいえ、軍用船としては余りにもお粗末だった。民間漁船を徴用したのだろう。第2次大戦当時の国情がはっきりと偲ばれた。馬鹿な戦争をしたものだと思った。

フィージー
スバの街は首都だけあって賑やかで活気に満ちていた。バス便がよく何処へでも行ける。タヒチほど豊かではないが物資も結構ある。カードで国際電話がかけられるとは予想もしなかった。今は携帯だろう。海もきれいで波も静か、日本レストランもあり、独立国であることを感じさせる豊かさを見た。海辺の民宿も見つかりそうな観光優先のお国柄だ。

フレンチ領ポリネシア
タヒチの首都パペーテは小パリと言われ賑やかだ。空港ではフラダンスで迎え、花飾りの首輪をかけてくれる。狭い市内に何でもあるが高価で手が出ない。泳いだり海を楽しむなら小型機やフェリーで別の島のリゾートに行く。フェリーで着いた島ムーリアではマリンスポーツ何でも可能、イルカのショウまで見せてくれる。名産は黒真珠だ。アメリカからジャンボ機が飛来するのだからまさに観光の島である。

海辺に大きなホテルが立ち並ぶリゾート地と違い、これらの島々は原住民の素朴な家々が点在していて風情豊かな場所である。最近は時代並みに浜辺にリゾート高層マンションが建ち並び始めたかもしれないが。。。島めぐりは終の棲家探しの一環であって思いつきで訪ねたものではなかった。燦々と照りつける太陽の恵みのもと、現在のしがらみを忘れ、ボーッとして日がな一日を過ごすのは人生の余得のような気がするのだ。

天国のような島のサンセット

文:小川律昭

筆者プロフィール
<小川律昭(おがわただあき)> 86歳
地球漫歩自悠人。「変化こそわが人生」をモットーとし、「加齢と老化は別」を信条とし、好奇心を武器に世界を駈け巡るアクティブ・シニア。オハイオ州シンシナティと東京、国立市に居所を持つ。在職中はケミカルエンジニア。生きがいはバックパックの旅と油絵。著書は「還暦からのニッポン脱出」「デートは地球の裏側で!夫婦で創る異文化の旅」。

<小川彩子(おがわあやこ)>80歳
教育学博士。グローバル教育者。エッセイスト。30歳の自己変革、50歳過ぎての米国大学院博士過程や英・和文の著書による多文化共生促進活動は泣き笑い挑戦人生。「挑戦に適齢期なし」を信念とし、地球探訪と講演・発表の日々。著書は「Still Waters Run Deep (Part 1) (Part 2)」「突然炎のごとく」「Across the Milky Way: 流るる月も心して」ほか。
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