会話のキャッチボール
幼児にたくさんの言葉かけをすることで、子供の言語の発達を促せるということはみなさんも聞かれたことがあると思います。お母さん、お父さん方も意識して物の名前を言ったり、読み聞かせをしたりされていることと思います。
そんな中、最近発表された研究で面白い結果が出ました。
子供にただ話しかけたり、言語の豊富な環境に子供を置いておいたりするだけでは十分ではないという結果です。この研究では、子供のポケットにマイクを仕込んで、その子がうちでどれくらい「会話」をしているかを調べました。ただ、たくさん話しかけられた子供、話しかけに対して子供の方から受け答えをした子供などのグループに分けて、研究に参加した子供の言語をつかさどるエリア(ボッカエリア)をFMRIで調べてみました。その結果、ただ言葉のシャワーを浴びた子供より、なんらかの形で受け答えをした子供の方が言語をつかさどるエリアにいい発達が見られたということです。
この研究では、4歳から6歳の会話のできる子供が対象でしたが、もっと年齢の小さい、まだ言葉の出ていない幼児でも、「音を出して真似っこする」「顔の表情を真似っこする」など、会話に似た状況を作ることができます。
ここで大切なのは、
• アイコンタクトをとる
• キャッチボールをするように、代わる代わるする
• 相手のアクション(会話)を待つ間ちゃんと間をとる
ということです。
こういったインターアクションは、残念ながら、コンピューターやテレビではできません。いくら教育的なプログラムでも、その前に子供を座らせているだけだったり、子供が遊んでいるときに流しているだけでは、本当の「言語」として子供の身につきません。たとえ、子供が難しい言葉を丸覚えしたとしても、本当に会話に使えるとは限りません。
子供と会話をするというのは、時間と辛抱の要ることですが、みなさんの子供へのプレゼントのつもりで、意識して「会話のキャッチボール」の時間を作ってみてください。
参考
MIT News Feb. 13th, 2018
“Back-and-forth exchanges boost children’s brain response to language”
http://news.mit.edu/2018/conversation-boost-childrens-brain-response-language-0214#.WoeLKFHiscw.facebook
<アブラモフ 羊子>
京都生まれの京都育ち、同志社大学卒業。Concordia University 幼児教育学修士。2000年Golden Apple Award Finalist。2001年Kohl/McCormick Early Childhood Teaching Award受賞。現在モンテッソーリ・ランゲージ・アカデミーでDirectorを務める。バイリンガル教育のプロフェショナル。