【第275回】アメリカ・日本

松葉杖でアメリカへ自動車免許証更新に

アメリカの自動車免許証更新

3月8日、Cincinnati, Ohioから帰国の当日と前日は雪だった。宿から空港まで通常は40分で行けるところ雪の高速道路ノロノロ運転と事故による渋滞で2時間かかった。帰国したら日本は春だったが、これを書いているお彼岸には東京にも牡丹雪が降り続けている。86歳の夫と筆者がアメリカの自動車免許証更新に行ってきた。4年有効だから夫はアメリカで90歳まで運転できる。昨年末階段から墜落して骨折した夫の足首腓骨はくっ付いたが、2か月以上使わなかった足の筋肉が衰え自由な歩行はまだまだ、治療中途ながら松葉杖、空港内は車椅子で移動した。飛行機が乗換空港に着くとドアの外には車椅子が待っていて、夫を乗せ次の飛行機の搭乗ゲートへ。筆者は小走りに追いかけ、チップだけは忘れないよう注意して。第一目的の自動車免許証更新会場へはシンシナティ到着初日にレンタカーで行き、夫婦とも無事更新した。会場に掲げてあったサインがとても新鮮だったのでご紹介しよう。You are never too old or too ill for Driver’s License! アメリカでは年齢ひとからげに規制はしない。むしろ「年齢や病気を超越して運転しなさいよ!」と奨励する。個人の意思を尊重するからだ。他方、日本帰国と同時に高齢者認知機能検査の通知が公安委員会から夫へ来ていた。認知機能検査だが、試験官は加齢者への配慮があるのか疑わしい態度で最初からボケ老人扱い、幼稚園児に対するごとく答案の書き方を説明し、半分馬鹿にしたような言葉使いで、「試験料650円を払って屈辱感を味わいに行った感じだった」と夫。日本では老人は運転免許証返還推奨ムードがあり、86歳は普通なら免許証を返却する年齢だろうが、「十羽一絡げはよくない」とも夫。狭い道路、人も自転車も一緒の交通事情ゆえ、ボケ検査は仕方のないことかもしれないが。

左:シカゴ空港で車椅子のお世話になる夫 右:好みのレストランがあるモールに立つ松葉杖の夫

若い友人やシニア会と交流

免許証更新直後に活動開始、連日旧交を温めた。夫は松葉杖をついて。ある有名シンフォニーのヴァイオリニスト、Tom と新婚の夫人Lauraや大学院時代からの古い友人、等。シンシナティに住んでいた時、家でよくMulticultural Music, Art, and LuncheonというParty をやったが、Tomは我が家のPartyで何度か演奏してくれた人。シンシナティ市周辺に居住する日本人のシニア会があると聞き、最後の夕べにはせ参じた。散会後その会の幹事役から会員に温かい総括文が送信されたが、「20年以上シンシナティに居住していた小川夫妻は年に2回は“帰郷”、出席メンバーの大半と知り合いだったが、特に佐藤Betsyさんは、彩子さんが20年前シンシナティ大学で博士号を取得した時のAdvisorで、久しぶりの再会だった」と。そして、筆者夫婦の最新の著書、「地球千鳥足:バックパッカー夫婦の人間遺産と触れ合う旅。(帯には『シニア夫婦の世界珍道中:ダマされても掏ラれても私たちは旅をする』とある)を紹介してくれた。これまで世界各国(111か国!)を旅してJ-Angleに書いた地球千鳥足の集大成だ。「松葉杖で飛行機に乗って海を渡る人に元気をもらった!」というコメントも頂いてシンシナティを後にした。

Cincinnati“帰郷”

文/小川彩子

筆者プロフィール
<小川律昭(おがわただあき)> 86歳
地球漫歩自悠人。「変化こそわが人生」をモットーとし、「加齢と老化は別」を信条とし、好奇心を武器に世界を駈け巡るアクティブ・シニア。オハイオ州シンシナティと東京、国立市に居所を持つ。在職中はケミカルエンジニア。生きがいはバックパックの旅と油絵。著書は「還暦からのニッポン脱出」「デートは地球の裏側で!夫婦で創る異文化の旅」。

<小川彩子(おがわあやこ)>80歳
教育学博士。グローバル教育者。エッセイスト。30歳の自己変革、50歳過ぎての米国大学院博士過程や英・和文の著書による多文化共生促進活動は泣き笑い挑戦人生。「挑戦に適齢期なし」を信念とし、地球探訪と講演・発表の日々。著書は「Still Waters Run Deep (Part 1) (Part 2)」「突然炎のごとく」「Across the Milky Way: 流るる月も心して」ほか。
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