【第82回】海外で日本語・日本文化を理解していることは有益

 海外での生活が長くなると、子どもの日本語力が伸び悩む傾向にあります。読み書きの力が伸び悩むと、補習校での学習についていけなくなりますし、会話力が伸び悩むと、補習校のクラスメートとのコミュニケーションもできなくなります。結果として、補習校をやめることにもなり、ますます日本語力が伸び悩んでしまいます。では、そうならないためには、どうすればよいでしょうか。
 まず、家庭内を日本語環境にすることです。親子や母子または父子の間では日本語を使用している家庭は多いと思いますが、兄弟姉妹の間でも日本語で会話することが大切です。また、親子間の会話においては、お子さんの年齢に合わせて、ボキャブラリーの質を上げることも必要です。会話の他に、多くの時間を過ごすリビングルームには、日本語の本や雑誌などを置き、テレビでも日本語放送や日本語のビデオを流すことなどもお勧めします。
 次に、夏休みなどを日本で過ごすことです。この時は、終日、日本語で会話するように心がけましょう。また、祖父母や親せきの家の中だけではなく、近所や地域の方々と交流することが大切です。地元の学校での体験入学も、もちろん効果的ですが、同年代の子どもや易しい日本語を使ってくれる先生だけでなく、幅広い世代の使う日本語に触れることで、ボキャブラリーが豊富になり、聞く力の向上にもつながります。
 もう一つは、日本語を修得するモチベーションを上げることです。ますますグローバル化が進む国際社会では、日本や日本人と関わることも多いでしょう。また、日本や日本人に興味を持つ外国人と関わる機会もたくさんあるでしょう。つまり。海外で暮らしていても、日本語ができることや日本文化を理解していることは、将来、必ず役に立つのです。

《執筆者》

丹羽 筆人(名古屋国際中学校・高等学校 アドミッションオフィサー北米地域担当 )河合塾での指導経験を経て、米国ではCA・NY・NJ・MI州の補習校・学習塾にて指導。現在はサンディエゴ補習授業校教務主任。代表を務める「米日教育交流協議会」では、日本語・日本文化体験学習「サマーキャンプ in ぎふ」を実施。他に、河合塾北米事務所アドバイザー。

●お問い合わせ先: nihs@ujeec.org(名古屋国際中高)