【第276回】アメリカ

迷って見たい白い砂丘

 ここホワイト・サンズはアメリカ、ニューメキシコ州の都市、アルバカーキーの南方500キロメートルの砂漠地帯にある。小山をつなぎ合わせた見渡す限り白い平原で、約600平方キロメートルにも及ぶ広大な砂丘だ。ホワイト・サンズはかつて原爆実験がなされた地域だが、観光地としての知名度は低い。交通の不便さも手伝ってか知る人ぞ知る場所である。温暖な気候が理由で近年州南部が保養地として見直され、移住者が増え、州の人口も増加してきた。ホワイトサンズに至る道中の平地は4月の初旬ともなればもえぎの新緑に包まれて美しい。
 ホワイト・サンズ入口から左側に低木を交えた白い砂丘が広がること4平方キロメートル、真っ白に覆われた砂丘のど真ん中に出る。車のために開けられた道の両側には行けども、行けども真っ白な砂山が折り重なる。途中のもろもろに枝道があり、入っていくと見どころがある。中心部はループ・ドライヴになっておりピクニック・エリアもある。車から降り、10メートル前後の砂山を駆け上がると目の前は無限に広がる砂丘、ホワイト・サンズがぐっと身近に感じられる。子どもを遊ばせている家族連れが多いが、子どもたちは砂丘の落差を利用して大声をあげて砂滑りに余念がない。もう少し歩けば人影はなくなる。人が歩かぬ砂山には幾何学的波紋がくっきりと天然美を醸し出している。空は紺ぺき、波紋にうねる真っ白の砂が陰と陽の芸術を展開し、見晴るかすやまやまは墨色に霞む。有り余る紫外線の恩恵にあずかるべく水着で日光浴をする。海辺と砂丘の違いは風邪を引かないことだけ、と現地のガイドブックにある。
 なぜ、大陸の奥地にこのような砂丘が存在するのか。理由だが、何万年もの以前、近くの山から石灰分が流れ出て湖を埋め、ここで結晶化。その後何世紀もかけ、乾いた南西の風で風化した砂が飛ばされてきて出来たという。今日現在でも活動し続けているというが、自然の芸術に驚嘆させられる。朝夕の光と影を追っての写真撮影には絶好の場所だ。
 多くの人たちがこの大自然の贈り物の恩恵に浴することが出来るよう願っている。広大なアメリカの大自然を仲良しグループで楽しみながら自由な散策を試みれたらいかが?

文/小川律昭 

筆者プロフィール
<小川律昭(おがわただあき)> 86歳
地球漫歩自悠人。「変化こそわが人生」をモットーとし、「加齢と老化は別」を信条とし、好奇心を武器に世界を駈け巡るアクティブ・シニア。オハイオ州シンシナティと東京、国立市に居所を持つ。在職中はケミカルエンジニア。生きがいはバックパックの旅と油絵。著書は「還暦からのニッポン脱出」「デートは地球の裏側で!夫婦で創る異文化の旅」。

<小川彩子(おがわあやこ)>80歳
教育学博士。グローバル教育者。エッセイスト。30歳の自己変革、50歳過ぎての米国大学院博士過程や英・和文の著書による多文化共生促進活動は泣き笑い挑戦人生。「挑戦に適齢期なし」を信念とし、地球探訪と講演・発表の日々。著書は「Still Waters Run Deep (Part 1) (Part 2)」「突然炎のごとく」「Across the Milky Way: 流るる月も心して」ほか。
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