再会を願い恋人を探すようにうろつき回ったウルムチ
今回の中国西域ウイグル地区への旅の目的の1つはある人に会うことだった。その人は「ウルムチ市内の大学教授で日本の東北大学で教えたことがある」、というのが唯一の情報。名前も知らず写真が1枚あるだけだった。6年前(と思っていた)ウズベキスタンのサマルカンドで出会い、共に2、3の見どころを見学し、筆者と夫とこの教授と、教授の同僚と4人一緒に記念撮影した写真だ。これで何とか探せると思っていた。往きの飛行機の機内放送で、「機内で許可なくXXしたらあなたは捕えられ刑務所に入ることになる」と。脅しで政治を行う国に着いた。予約したJ-Iホテルは清潔で親切、楽しい滞在だったが…。
「世界遺産より人源遺産を!」と歌う筆者は出会い、特に奇遇珍遇が大好きで、今回は突然の再会で相手とサプライズを楽しみつつ一緒にお茶か食事をする、というだけの子どもっぽい目的だった。ウルムチ(烏魯木斉)市に着いた初日に行動開始。教授探しで市内の全ての大学を訪問した。先ず農業大学へ。だが、どれだけ頼んでも絶対に門の中に入れてくれなかった。学内の誰かへの紹介状が無ければ駄目というが、日本のように自由な国ではないので当然かもしれない。優しい警備男性がタクシーを拾ってくれ、次は医科大学へ。老齢の女性警備人に写真を見せ「この教授に会いたい」と言ったら、「入れ!」と。構内に入ったが職員室らしき部屋で「この教授はいない!」と言われ、卒業式の角帽集団の写真を撮っ他だけで退出。次は師範大学まで歩き、またも4、5人の門衛団と交渉だ。写真を見せたら、目的の教授ではないが同僚教授が逮捕された、と手首が縛られる手真似をした。学者だから政治批判でもしたのか。目的の教授は一度来日した、と言ったらハンガリー出身の女性教授を連れて来てくれたが、この教授も目的の教授を知らず、別の教授が出てきて「この人は新疆大学にいる!」と嬉しい情報をくれた。女性教授がタクシーを拾ってくれ、高速道路経由、新疆大学へ。だが折角目的の大学にやって来て写真を見せても門衛のセキュリテイーが厳しく、追い払われるごとく退散、草臥れてホテルに戻り休むしかなかった。街にはおしゃれなカップルが手に手にスマホを持って闊歩、至る所に警察署があり、建物に入るには待つ、待つ、チェック、チェック、のお国柄だった。
ウルムチ市内の旅行エージェントでトルファン観光を申し込み、仲良くなったKさんとおしゃべりしようと観光後立ち寄った。帰国の前日だった。Kさんに新疆大学の教授の話をしたら興味を持ち、お得意のスマホを使って探索、遂に名前を見つけてくれた。ジョージアさんだと。(漢字は伏せる)そして、「各大学教授や公務員は1-2年、郊外で援助活動をする義務があり、彼は今その義務で市内にいない」と。筆者の名刺を彼にFaxし、電話番号も調べ、彼とKさんは会話をしたが筆者に話させてはくれなかった。彼は8年前ウズベキスタンで会っただけの日本人がそんなに会いたがる理由が判らず、用心したのだろう。
翌日は帰国の日、ホテル受付の1人に昨日手にしたジョージアの電話番号を見せたら、彼が自分のスマホでさっさと電話し、ジョージアと話をし、筆者にスマホを渡してくれた。
A「ハイ、ジョージアさん!ウズベキスタンで6年前にあったAです!」
J「6年前ではなく8年前ですよ!」
A「オホホ、そうでした?ジョージアさんは東北大学で教えましたね!」
J「秋田大学ですよ!」
A「ああ、そう。お会いし、一緒にお茶したくてウルムチに来たんですよ!」
J「次回にね!」
A「メールをくださいね!」
J 「はい!」
恋人のように探し回った筆者にメールはまだ来ない。同僚が捕えられている状況ではあるものの…。

文・写真/小川彩子
筆者プロフィール
<小川律昭(おがわただあき)> 85歳
地球漫歩自悠人。「変化こそわが人生」をモットーとし、「加齢と老化は別」を信条とし、好奇心を武器に世界を駈け巡るアクティブ・シニア。オハイオ州シンシナティと東京、国立市に居所を持つ。在職中はケミカルエンジニア。生きがいはバックパックの旅と油絵。著書は「還暦からのニッポン脱出」「デートは地球の裏側で!夫婦で創る異文化の旅」。
<小川彩子(おがわあやこ)>79歳
教育学博士。グローバル教育者。エッセイスト。30歳の自己変革、50歳過ぎての米国大学院博士過程や英・和文の著書による多文化共生促進活動は泣き笑い挑戦人生。「挑戦に適齢期なし」を信念とし、地球探訪と講演・発表の日々。著書は「Still Waters Run Deep (Part 1) (Part 2)」「突然炎のごとく」「Across the Milky Way: 流るる月も心して」ほか。
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