【第114回】今後の帰国生入試では英語力の重要性が高まる傾向にある

 

 日本の入試は年々変化が見られますが、それは帰国生入試も同様です。

 帰国生中学入試では、入試科目として国語や算数に加え英語を課す学校が目立ちますが、国内生入試でも英語を課す学校が増加傾向にあるため、帰国生入試では英語を課す動きが、さらに加速化することが予想されます。また、帰国生受け入れ中学校では、より高度な英語力を求めてくる可能性もありますので、アメリカ滞在中に、より一層英語力を向上させることが必要です。英検なら2級や準2級合格を目指すと良いでしょう。

 帰国生高校入試は国語・数学・英語の3教科型が主流という現状からは、大きな変化は見られないと思われますが、国内生の英語力が向上してくれば、帰国生に求められる英語力がより高くなる可能性はあります。英検なら準1級や2級合格を目指すと良いでしょう。

 帰国生大学入試は、廃止する大学・学部が目立っているという動きが気になります。特に、2021年度入試から、早稲田大学が文学部、文化構想学部、人間科学部、スポーツ科学部の帰国生入試を廃止したことは、他大学の帰国生入試廃止の動きに波及する可能性もあります。早稲田大学は、すでに政治経済学部と社会科学部で帰国生入試を廃止していますので、帰国生入試を実施しているのは、法学部・商学部・教育学部・理工系の3学部となりました。

 このような帰国生大学入試廃止の動きがある一方で増加傾向にあるのがAO入試です。AOはアドミッションズオフィスの略称で、AO入試はアメリカの大学の入試方法のように、高校の成績やエッセイなどの書類選考で合否判定を行います。現在、国公立大学ではAO入試は総合型選抜入試と名称変更し、大学入学共通テストや小論文や集団討議、面接などが課されます。

 そして、AO入試の一種ですが、早稲田大学などで実施しているグローバル入試が増加傾向にあります。グローバル入試では、高校の成績に加え、TOEFLのスコアなど英語力を証明する書類が求められます。また、高校時代に行った活動(部活動や課外活動、ボランティアやインターンシップなど)を活動記録報告書として提出する必要があります。グローバル入試では、書類選考によって、国際社会のグローバル・リーダーとなり得る資質があるかどうかを判断しようとしているのです。

 また、英語で行われる授業のみを受講して卒業できる英語学位取得プログラムを行っている大学・学部も続々と登場しています。約10年前に文部科学省のグローバル30(国際化拠点整備事業)が始まり、その後のスーパーグローバル大学創成支援事業に引き継がれた、日本の大学に留学する学生を増やそうという動きによるものです。

 総合型選抜入試(AO入試)・グローバル入試は、帰国生でも受験可能ですし、英語学位取得プログラムの入試には、帰国生でも受験可能な大学・学部もあります。その中には帰国生入試を実施していない大学・学部もあり、英語学位取得プログラムの導入が帰国生入試の廃止や縮小につながっている傾向もあります。英語学位取得プログラムの入試は、書類のみで合否が判定されますが、SATやAPテストのスコアなどが重視されており、外国人留学生と同様な英語での学力が求められています。  このように、日本の大学に進学する帰国生は、従来の帰国生入試のように、現地校卒業後に帰国してからの受験勉強で合格できる道が少しずつ狭くなりつつありますので、グローバル入試や英語プグラムの入試を意識して、現地校での優秀な成績、TOEFLやSATなどの高スコア、現地校の部活動や課外活動などの実績などを収める必要があります。

《執筆者》

丹羽 筆人(名古屋国際中学校・高等学校、 アドミッションオフィサー北米地域担当 )

 河合塾での指導経験を経て、米国ではCA・NY・NJ・MI州の補習校・学習塾にて指導。現在はサンディエゴ補習授業校教務主任。代表を務める「米日教育交流協議会」では、日本語・日本文化体験学習「サマーキャンプ in ぎふ」を実施。他に、河合塾海外帰国生コース北米事務所進学アドバイザー。

●お問い合わせ先:E-mail nihs@ujeec.org(名古屋国際中高)